パート8

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電車と車と自転車と人が複雑に絡んだ駅の先で車を降りる。雪はさっきより強くなっていた。オートロックの付いた八階建てアパートの五階までエレベーターで案内される。築年数は浅いと思った、風呂とトイレがセパレートになった部屋だった。父と母はそのときぼくの顔をみただろうか。帰りの時間が迫っていたことや疲れもあってすぐに判断をする余裕はなかった。案内が終わり、車まで戻るまでに通りに面したガラスを全面に使用した本屋?が発する明かりが目についた。足を止めるぼくに中の人は店に入りなよと楽しげに手招きしている。店の中から手招きされる経験はなかったけど悪い思いはしなかった。即決だった。この店の近所で過ごす四年間はきっと特別なものになるだろうそんな予感しかなかった。引っ越しがおわり、学校が始まる。ひとつの店がひとりの行くみちを決めることだってある。毎日店に入るわけではないけど、通学に帰り道にバヒュッテはぼくの生活とともにある。